区議会 第3回定例会 決算特別委員会 関口江利子が区民生活委員会所管の質疑を行いました。質問全文をご覧いただけます。

議会の様子は↓こちらからご覧いただけます。

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1.気候変動の緩和策と適応策について

1-1.生活者ネットワークの区民生活領域の質問を行います。最初に、「世田谷区地球温暖化対策地域推進計画」に基づく気候変動への緩和策と対応策、その具体的取り組みについてお聞きします。

計画では、気候変動を抑えるためには、地球温暖化の原因物質である温室効果ガス排出量を削減する「緩和」によって根本的な原因への対策を講じなければならない、とあります。例えば、節電・省エネや再生可能エネルギーへの転換、みどりを増やすなどです。さらに計画には、最大限の排出削減努力を行ったとしてもこれまで温室効果ガスを排出し続けた影響による気候変動は避けられない、とあります。それが毎年の異常気象です。そのため、気候変動の悪影響を軽減する「適応」を同時に進めていくことが必要と示しています。例えば、熱中症対策や豪雨、台風への備えです。三日前の総括質疑にて私ども会派の質問に対し、気候変動の原因を少なくする「緩和策」と気候変動の影響を小さくする「適応策」は表裏をなす取組みとして、一体的に進めなければならない、とご答弁いただいています。

本年6月の一般質問で熱中症対策の「お休み処」を気候変動対策に活用するよう求めました。「お休み処」は気候変動に対する適応策として実施している事業だとご答弁されています。であれば、水分補給として8万6000本ものペットボトルをばらまくのではなく、マイボトルの推進や行動変容を促す周知啓発、つまり緩和策もセットで進めるべきとの趣旨の質問だったわけです。改めて「お休み処」を起点とした他所管と連携した気候変動対策の進捗について伺います。

答弁

1.委員からは従前よりこのお休み処の取組みにおいて、気候変動対策のPR を行ってはどうかとのご提案をいただいており、区としても熱中症リスクへの 関心から気候変動を考えるきっかけになる取組みとして、お休み処を設置する 保健所と環境政策部で調整をしてまいりました。

2.今年度の取組みでは間に合いませんでしたが、来年度は保健所が作成する涼風マップに気候変動に関する周知啓発を図るスペースを設ける予定です。

3.お休み処において気候変動に関するチラシの配架や展示などの取組みについては、公共施設を対象とし、施設のスペースや利用状況など施設ごとの状況をふまえて、管理所管との調整など、実施可能性を検討しています。

4.現在策定中の環境基本計画では、カーボンニュートラルや地球環境を意識した暮らしの実現、資源循環型社会の構築などを将来像として掲げており、本件も持続可能な地域社会の実現に向けて庁内一丸となって行う取組みの一環として進めてまいります。

 

小さなことですが「お休み処」はあくまで具体の一例です。このような、分野を横断した取り組みを各所管が連携する事例を重ねていただき、区民への行動変容の促しをしていくことで効果的な数字の積み上げへとつながるはずです。計画が絵に描いた餅にならないよう、鋭意(えいい)すすめてください。

2.障がい者スポーツの普及啓発について

2-1.次に、障がい者スポーツの普及啓発についてです。スポーツは公平な条件で行うためのルールが必ず定められています。パラスポーツは、さらにプレーヤーへの合理的配慮がルールとして盛り込まれており、安心して競技に参加することができます。障がいがあってもなくても、参加する人も観戦する人も楽しむことができるパラスポーツをもっと区民が身近に捉えられるようにすべきと考えますが、区の見解をお聞きします。

1.パラスポーツは委員のお話のように、参加者も観る人も楽しめるよう障害に応じて、ルールや用具が工夫されるなど、合理的な配慮がなされ、より多くの方がスポーツに参加できることから、運動をする機会の創出、また障害に対する理解が深まる重要な取り組みと考えている。

2.区ではこれまで、学校でのパラスポーツ体験授業や、ボッチャ世田谷カップ、車いすバスケットボールエキシビションマッチの開催など、様々なパラスポーツの体験や観戦の場を設け、多くの区民がパラスポーツを知り、体験できるよう普及啓発に取り組んできた。

3.今後も、スポーツに親しむ区民が増えていくよう、より一層の普及啓発に取り組むとともに、区内でパラスポーツが根付くよう、協定を締結している日本ボッチャ協会や日本パラ陸上競技連盟などとも連携し、区民が継続してパラスポーツに触れ、活動ができる場や機会の創出に努めていく。

2-2.来年11月には聞こえに不自由のある人の国際総合スポーツ競技大会「東京2025デフリンピック」が開催されます。東京都が主催ではありますが、当区にある駒沢オリンピック公園で3種目の競技が開催されます。難聴者や聾者への理解や言語としての手話、パラスポーツの一層の浸透のためにこの契機を逃す手はないと考えますが、区の取り組みを伺います。

答弁

1.世田谷区ではこれまでスポーツイベントの機会を通じてデフリンピックのPRブースの設置や、手話ダンス体験の実施、選手との交流など、大会の認知 拡大とパラスポーツへの理解促進に努めてきた。

2.今年度は、区のおしらせで1年後にデフリンピックが開催されることを周知するほか、駒沢公園を会場として開催予定のラグビーイベントにおいても大会PRやデフスポーツ体験などを行う予定。また、大会直前期にデフリンピックの会場となる駒沢公園で、大会PRや実施競技の紹介、デフスポーツ体験など、気運醸成の取組みを検討する。

3.引き続き、デフリンピックを通じたパラスポーツの理解と普及を進めるため、関係所管と連携し、区内でのイべントや学校での啓発活動を強化し、地域全体での気運醸成に努める。

 

福祉所管と連携を取ってそれぞれ障がい視点、スポーツ視点で進めていただけるよう要望します。

3.せたがや未来の平和館の周年記念に向けて

3-1.最後に、世田谷公園にあります「せたがや未来の平和館」についてです。1995年玉川小学校の空き教室で「平和資料室」として始まり、来年で30年、未来の平和館として開館してから10年です。多くの方の関わりとご尽力でここまできたと聞いています。平和都市宣言40年、戦後80年を迎える中で、未来の平和館が未来に平和を訴求し続ける施設としてブレないための軸のようなもの、理念や信念のようなものはあるのでしょうか。

例えば広島平和記念資料館は「ノーモアヒロシマ」に尽きると思います。川崎市平和館は、「平和学的デザインに基づいて創られた平和博物館」として、戦争だけでなく、貧困や差別、環境問題など平和を阻む(はばむ)さまざまな問題を切り口に平和への理解を深める展示を行っています。これら明確なビジョンを持っている施設は、発信テーマが変わっても本質がブレることはありません。そこで、「せたがや未来の平和館」についても伺います。

答弁

1.せたがや未来の平和館は、平成27年(2015年)の開設以降、「過去を知り、感じ、考える」、「現在を理解する」、「未来を展望する」の3つの視点のもと、各種平和事業について取り組んでいるところです。

2.また、平和館が果たす役割としては、「世田谷区の地域特性・資源を踏まえ、戦争の悲惨さと平和の尊さについて理解を深め、区民・利用者に恒久平和の実現に向けた意識を醸成する。」としております。

3.しかしながら、恒久の平和を考えるうえでは、戦争以外の要因、例えば地震や自然災害などにより平和な状態ではなくなることや、貧困や人権、環境など、SDGsの中にも平和というテーマが内包されていることから、こうした視点も含めていくことも重要になってまいります。昨年度は関東大震災から100年を迎えるにあたって災害と平和を結び付け、企画展を実施したところですが、今後も、平和館の主な役割である、過去の戦争の記憶の継承とともに、広く平和とは何かといった観点もふまえて、平和について区民とともに希求してまいります。

 

「ジェンダーと平和」「関東大震災100年から考える「災害と平和」」など戦争だけにとらわれず人権も絡めた「平和」とは何か?について施設職員の創意工夫が感じられる見応えのある企画展が多いと感じています。ぜひ今後、この先何十年経っても継承される区民と区にとっての「せたがや未来の平和館」の共通理念を持っていただけたらと思います。

3-2.次に名称の表記についてです。6月の一般質問に向けて、正式名称「平和資料館」と愛称「せたがや未来の平和館」の表記がバラバラなので整理した方が良いと問うたところ、愛称を打ち出していくとのお答えでした。8月15日発行の区のおしらせやせたがや未来の平和館だよりは愛称に相応しい若者や子どもと未来の平和を作っていくことが伝わる内容で、とくに平和館だよりはデザイン性も素晴らしく向上していました。そんな中、粗探しのようで恐縮ですが、未来の平和館の施設名称サインやホームページ、世田谷公園内の園内マップも統一されていない箇所があります。さらなる愛称浸透のために迅速な対応を求めます。

答弁

1.「せたがや未来の平和館」の愛称については、先の定例会における委員からのご提案も契機としまして、積極的に使用を図っております。また、建物に掲げている「世田谷区立平和資料館」の看板も、「せたがや未来の平和館」の記載に統一していけるよう検討を進めているところです。

2.あわせて、世田谷公園内のサインにつきましても、公園管理事務所と調整を図っているところです。

3.平和資料館の表記につきましては、愛称のせたがや未来の平和館で統一しておりますが、一部修正がしきれていない部分につきまして、点検して修正してまいります。

3-3.次に寄贈品のデジタルアーカイブについてです。展示できていない貴重な寄贈品が大量にあると聞いていますが、デジタルアーカイブ化して活用してはどうでしょうか。見解を伺います。

答弁

1.平和館に収蔵されている寄贈品等をデジタルアーカイブ化することは、展示できていない寄贈品を紹介できる機会となるとともに、年数とともに劣化が進む寄贈品の保存記録にもなります。さらに、来館できない方にもご覧いただき、せたがや未来の平和館を知っていただくためにも有効な手法と認識しています。

2.近隣自治体では、三鷹市の「みたかデジタル平和資料館」が見やすく、参考になるのではと考えております。そうした先行自治体などの例を研究し、区としても、せたがや未来の平和館として、どのような内容をデジタルアーカイブ化することが、観る人にとって有効なのか検討を始めたいと考えております。

 

3-4.次に常設展示のリニューアルについてです。現状の常設展示は、情報量が多く全てを見るには時間がかかります。中学生くらいまででは途中で飽きてしまいそうです。また、小学生向けにルビを振る工夫があっても良いと思いますし、背の低い子どもや車椅子の方にも見やすい工夫が必要と思います。多言語化や情報保障など気になることは色々ありますが、開館10周年に向けできるところから手を入れていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

答弁

1.現在、来年に迎えるせたがや未来の平和館開館10周年に向け、展示コーナーの構成や解説内容など、常設展示スペースのリニューアルの検討を進めているところです。

2.委員からのご提案も含め、展示スペースの配置や見学時間の目安の設定、解説文のルビなど、大人に限らず子どもにもわかりやすく、見やすい展示となるよう、引き続き、検討し工夫してまいります

 

3-5.最後の質問です。6月の定例会で来年の節目に合わせた記念イベント、特に区民参加型のイベントを開催することを求めました。進捗を伺います。

答弁

1.10周年記念事業につきましては、先の定例会でご答弁しましたとおり、10周年を記念した記念誌の発行と、平和館内の常設展示室のリニューアルについて具体的に取り組んでいくこととしております。

2.このほかにも、子どもから大人までそれぞれの年代に応じて参加できるよう様々な事業や企画について検討を進めているところです。

3.今後は、事業の妥当性や効果、集客などの観点から時期、会場、内容等を具体的に決めながら10周年事業としてふさわしいものとなるよう、また、区民の方々の記憶や記録に残るよう、引き続き検討してまいります。

 

「せたがや未来の平和館」は、23区で唯一、自治体が運営する平和をテーマにした施設です。一般質問で青空委員から、戦争を知る唯一の議員として果たす責務があるとお話がありました。戦後生まれの私たちは、先輩方の経験を真摯に受け取り、語り継いでいく責務があると思っています。私は、被爆2世だから平和への関心が高いのねと言われることがあります。でも、私たちは全員が戦争2世ないし3世です。だれしも「自分ごと」にできるはずです。これからさらに10年20年と、区民の平和への願いに優しく寄り添うような「せたがや未来の平和館」となってほしいと願います。

以上で、区民生活領域の質問を終わります。