区議会 第3回定例会 決算特別委員会 関口江利子が文教委員会所管の質疑を行いました。質問全文をご覧いただけます。

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2023年10月13日

決算特別委員会(文教健領域)関口江利子

生活者ネットワークの文教領域の質問を始めます。

まず最初に、区立小中学校での平和学習についてです。

総務省が今年4月に行った発表では、戦後生まれの人は総人口の87%だそうです。ほとんどの人が戦争を知らない中で、現代の子どもたちが戦時中に起きたことや戦時中の暮らしを学ぶためには学校教育における平和に関する学習が重視されています。広島出身の私にとって、学校での平和学習は馴染みのあるカリキュラムでした。当時は被爆語り部の方も多くいらっしゃいましたので、被爆体験を伺ったことが印象的で記憶に残っています。今回、改めて広島市教育委員会のホームページを見ましたら、小学校1年生から高校卒業までの12年間で命の大切さから世界平和の実現まで段階的に4冊の「ひろしま平和ノート」を活用して平和教育プログラムが組まれていました。小学生では、広島に起きた被害と命の大切さを伝え、中学生になると広島と世界の関わりを知りよりよい社会のために解決すべき課題を探究、高校生ではより詳しく専門的な内容で平和で持続可能な社会の実現について展望していきます。また他の自治体では、平和学習支援検討委員会を設置して平和学習を行う上での課題や授業中に使用する資料について検討しています。共通して言えることは、地域教材を積極的に活用して子どもたちが自分起点で戦争を身近に捉え平和について考えることを主にしていることです。世田谷の区立小中学校ではどのように平和学習が行われているのでしょうか。

1.子どもたちが命の尊さを理解し、戦争のない世界平和を願う心をもつことは、当然のことながら、大変重要なことであると考えております。

2.現在、各学校においては、社会科の歴史分野で、広島、長崎への原爆投下や、その被害の大きさなどについて学習したり、国語科の読み物教材で戦争を背景にした内容を学習するなど、各教科等を通して平和について考えることができるようになっております。

3.小学校3年生の社会科で使用する副読本「わたしたちの世田谷」では、戦時下の世田谷の様子についての資料や区立平和資料館を活用した学習のページを設け、児童が世田谷の事例で平和について考えることができるようになっております。

4.中学校では、平和資料館の所蔵する写真や資料を学校に展示する巡回展示の見学などを通じて、戦時下の世田谷の様子などを学んでいるところでございます。

社会や国語の教科書で取り扱う広島や長崎の被害を通じて平和を考えるとのご答弁でした。広島や長崎を題材にすることを否定はしませんが、まず子どもたちには、世田谷にも軍事基地があり空襲被害があり何より戦時下でも日常の暮らしがあったことを知ってもらい、人ごとではない平和の大切さを実感してもらう体系的な学びが必要だと思います。社会科の副読本「わたしたちの世田谷」での戦争の取り扱いもほんのわずかです。どのように平和の要素を加えて授業を行うのかは教員の裁量次第では、あまりに心もとなく感じます。そんな中、3年間かけて平和学習に取り組んでいる中学校があるとお伺いしましたので内容を教えてください。

1.委員お話の通り、世田谷区の中学校で3年間をかけて、系統的に平和教育に取り組んでいる学校がございます。

2.1年生では、世田谷の歴史について広く学ぶ中で、戦中の様子について触れるとともに、語り部を招いて東京大空襲についての話を聞いています。

3.2年生では、郊外学習で班ごとにコースを決め、都内巡りを行う中で、東京大空襲・戦災資料センターと都立第五福竜丸展示館への訪問を必須として、東京の空襲の歴史と原水爆の被害について学び、平和について考えています。

4.3年生では、修学旅行で広島を訪問し、原爆ドーム、平和記念公園等の見学や語り部の話を聞き、これまで学んできたことを生かしながら、平和な社会をつくり、守っていくことについて考えています。

5.3年間かけて平和について学んだ生徒たちは、関心のあるニュースとして世界の平和や戦争に関わる話題を挙げることが増えるなど、平和への熱意と協力の態度が育成されていると報告を受けております。

ありがとうございます、素晴らしい取り組みだと思いました。座学と実地、世田谷、東京、広島とフィールドを3年かけて段階的に広げていくことで、子どもたちが人としても成長している様子が伺えます。ただ、残念なことにここまで実施している中学校は29校のうちひとつだけとのことなので、良い事例は共有し他校の参考にもなるようにしていくことを要望します。

世田谷区では、人権・福祉・平和・キャリア・健康などからテーマをチョイスをして教科を横断して学習に取り入れることを実施していて、カリキュラム・マネジメントというそうなのですが、取り入れるテーマは学校に任されているとお聞きしました。平和学習についても、学校によってさまざま特徴がでる理由のひとつがこのカリキュラム・マネジメントによるものなのだと理解しました。

とはいえ、令和5年の区民意識調査「平和資料館」の項目によると、10〜20代の若者の83.6%が平和資料館のことを知らない、行ったことがある・行ったことはないが知っていると答えた人はわずか15.2%と大変残念な数字が出てしまっています。これは全年代で同じような結果が出てきているのですが、世田谷公園での開館から8年目を迎え、学校で学ぶ機会がある10代には今後もっと知っていってもらいところです。平和資料館はじめ地域教材の活用をさらにすすめるべきと考えますが教育委員会の見解をお聞きします。

1.(小学校3年生に関わらず、)教員が子どもを中心とした探究的な学びを推進する中で、児童生徒が主体的に、地元世田谷の戦時下の生活や平和への歩みについて学ぶことができるよう、教科横断的な学びをデザインしています。

2.具体的な取り組みといたしましては、平和資料館とオンラインでつながり戦争体験の講話を聞いた後、児童が書いた平和メッセージを平和資料館に展示した学校や、国語科の読み物教材で戦争を背景にした内容を学んだ後、平和資料館を訪問して発展的に学んでいる学校があります。

3.今後も平和資料館のもつ強みを生かしながら、ICTを活用したデジタル資料の活用や独自資料の作成等についても研究し、平和教育の充実に努めてまいります。

区立小・中学校の平和学習の現状がよくわかりました。いま、国際情勢のニュースに触れるにつけ多くの子どもたちが恐れを抱いています。子どものニーズもとらえながら平和について横断的な学びを進めていただきたいと思います。機会をとらえてまた質問します。

次に香りの害「香害」について質問します。

日用品から発する化学物質で体調不良を訴える人が増えています。中でも柔軟仕上げ剤、合成洗剤、消臭スプレー、芳香剤、制汗剤など、主に香りのある製品で起こる健康被害を「香害」と呼んでいます。香害は、ある日突然発症し空気中に原因物質があるため除去が困難なことから花粉症に例えられることがありますが花粉症の方にはイメージしやすいでしょうか。ただし異なるのは、季節性ではなく365日症状に苦しむということ、他人から発せられる香りが原因となるので人間関係ひいては社会生活に大きな支障がでるということです。

2年ほど前に、消費者庁、文部科学省、厚生労働省、経済産業省、環境省の連名で作成した「その香り困っている人がいるかも?」というポスターが、今年7月から「知ってください!!その香り困っている人もいます」に変更され、強い言葉で改めて注意喚起がされました。8月にはNHKあさイチ、NHKラジオ、NHK WEB特集でそれぞれ取り上げられ、有害化学物質による体調不良と学校へ行けない・職場へ行けない等、日常生活を送ることができない苦しみが報道されました。その他、各種メディアで取り上げられ、多くの全国市区町村で「香害」や「化学物質過敏症」の周知啓発がされています。世田谷区においても6月1日に教育現場向け連絡システムすぐーるを使って「香りのエチケットについて考えてみませんか?」を発信したことは評価いたします。このように、少しずつ周知が進んできたということは、被害が増加、深刻化しているということに他ならない訳ですが、対策としては原因となる化学物質の曝露を避けることが有力です。特に子どもの頃から化学物質にさらされ続けると成長過程でリスクが上がることは想像できるかと思います。教育委員会では学校現場における「香害」についてどのように捉えていますか。

1.柔軟剤や芳香剤などに含まれる化学物質に基づく香りについては、ある人が快適な臭いと感じても、別の人は不快に感じる、さらには体調を崩す場合もあるように、人に与える影響はそれぞれ異なっております。

2.区立小・中学校の児童・生徒にも柔軟剤等の香りにお困りの方が一定数おりますが、人によってその香りに対する反応は異なるため、一様に対応することが難しく、また、広く認知されていない問題と認識しております。

3.教育委員会では、まず、学校や児童・生徒および保護者に対し、柔軟剤等の香りで困っている人がおり、香り付き製品の使用においては周囲の方への配慮も必要となることなど、香害に対する理解を促進していくことが重要であると考えております。

​先ほど花粉症を例にしましたが、戦後植林された杉を主な原因とする花粉症は、60年前までほとんど事例がありませんでした。しかし杉の木の成長とともに今や2人に1人が発症しているといわれています。新しい製品が次から次へと作られ原因物質がどんどん増えている香害は、原因となる製品を使用していなくても受動喫煙のような形で原因物質を取り込んでしまいます。一度発症すると完治が難しいことも花粉症と同じです。化学物質によって起こる害について早急に周知をすすめること、学校での暴露を極力減らす手立てが必要です。コロナ禍で教室の換気の習慣ができたことで環境が良くなったとの声もあります。このように学校の理解が本当に重要ですがまだまだ足りていません。ここに、当事者の中学生が作成したポスターがあります。理事者と委員の皆さまもぜひタブレットをご覧ください。頭が痛くなる、皮膚がヒリヒリする、ぐったりして力がでなくなる等、わかりやすくデザインされています。作者の中学生は、最初は体調不良を起こしてしまうため学校へ行けなかったそうですが、学校の理解があって今は別教室で授業を受けられているそうです。

これまで作られてきたポスター・チラシの中でも非常に良くできていると思いますので、小・中学校で配付や掲示するなど活用を求めたいと思いますがいかがでしょうか。また、ただ配付するだけではなく、香害や化学物質過敏症への理解が進むような資料の添付やどのように活用されたか等、調査することを求めます。

1.教育委員会では、平成30年に世田谷保健所作成の啓発チラシを全ての区立幼稚園、小・中学校に配付し、授業等での活用や、園内・校内で掲示することを依頼し、以降も、適宜、国が作成した啓発チラシの掲示や保護者へのすぐーる配信などを実施し、学校も含め、香害に関する啓発に努めてまいりました。

2.また、令和3年度には、学校給食で使用する白衣について、学校で用意する白衣やエプロン等の共用を基本としつつも、家庭により使用する洗剤等が異なることから、希望する家庭については、類似の白衣などを家庭から持参することも可能と改めているところです。

3.学校の理解が不足しているとのご指摘を受け、さらに学校の理解が進むよう、ご提案のポスターの活用について、学校に校内への掲示などを依頼するとともに、各校での活用状況を確認いたします。

やはり中学生の当事者が描いたということで、目にする子どもや保護者も興味を持ってくれるのではないかと思います。また、給食給仕をする際の白衣やエプロンを家庭から持参しても良いことになりましたが、中学生の子どもを持つお母さんたちに聞いても担任教諭から特に話はなかったとのことですので、先生方の意識も高めていただきたいと思います。そこで、学校校長会での周知や養護教諭の研修テーマに取り上げることも必要ではないかと思いますがいかがでしょうか。

1.学校への香害に関する理解促進については、これまでも校長会等で周知し、柔軟剤等の香りで困っている方への配慮や理解を求めてきたところですが、ご提案のポスターの活用についても校長会で周知するほか、小中学校の養護教諭の研究会で香害をテーマに取り上げることを提案するなど、引き続き、学校への啓発や理解促進に努めてまいります。

よろしくお願いいたします。

最後に、3月の予算特別委員会で当会派が質問しました文部科学省の委託事業「特異な才能のある児童生徒に対する指導・支援に関する実証研究」についてです。この国の事業に参加を申請しているとのことでしたが、その後の進捗を伺います。

1.令和4年度、教育委員会が申請しておりました文部科学省の研究事業「特異な才能のある児童生徒に対する指導・支援に関する実証研究」については、不採択となりました。

2.今年度、特異な才能のある児童生徒だけではなく、すべての児童生徒に魅力的な探求学習を実践するモデル校を指定して研究を進めております。

※~3.モデル校では、地域や大学主催の子どもたちで自主的に運営する「子ども祭りプロジェクト」や大学と連携して地質を学んだり、泥だんご遊びをしたりするなどの活動を計画しております。~※

4.今後、子どもが生き生きと輝ける魅力ある学校づくりの取り組みを行ってまいります。

※~モデル校を指定して手探りで研究していることがわかりました。~※ 世田谷は大学が多く若者の参加機会の創出を生み出す素地もありますので、子どものとの関わりの中で自然とピアサポート的な役割がでてくると期待したいと思います。※~地域資源を活用しながら一人ひとり異なる個性を認め合う学びの場が作られるよう、何よりも子ども当事者の声をしっかりと聞いて進めていただくことを要望して質問を終わります。~※

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